町で若者の寄り合いがありました。次から次へ恐いものを言い合いました。
「おれは蛇が恐い。あの動き方が嫌だ。」
「おれは狸が恐い。お化けに姿を変えるから。」
「おれはクモだ。クモの巣はねばねばする。」
「おれはコウモリだ。夜飛びやがる。」
みんな恐い物を話す中で一人だけ黙っているものがいました。
「おい、内ちゃん。恐いものはないのかい。」
「恐い!? 恐いもんなんか何もないよ。」
「蛇もクモもお化けも恐くないんかい。」
「そんなものは恐くないよ。」
「蛇は?」
「そんなものは頭が痛いとき、頭にまきゃ涼しくならあ。」
「たぬきは?」
「お化けが出たら、料理して、洗ってきれいにしてやらあ。」
「クモは?」
「納豆に混ぜてかき回してやらあ。」
「コウモリは?」
「傘にしてやらあ。」
と突然話すのを止めてしまった。
「どうしたんだい。」
「恐いものを思い出しちゃった。」
「それはなんだい。ぜひ教えてくれよ。」
「金、金プラが恐い。」
「キンプラ?そりゃどういう生き物だい?」
「生き物じゃないんだ。店で売っているものなんだ。ああ思い出しただけで気持ち悪くなる。」
顔色がみるみるうちに悪くなってきた。
「ああ、座ってられない。隣の部屋に布団をしいてくれ。」
床に入ると、とうとう毛布で顔をおおってしまいました。
これを見て、みんなは笑って、いたずらをすることにしました。
数人が町へ出かけて色々な金プラを買ってきました。小判・大判、工芸品、仏具です。
おぼんに金プラを乗せると、こっそり枕元に運び、気がつくのを待ちました。
「ねえ。内ちゃん。起きなよ。もうお開きだよ。」
「わかったよ。起きるよ。でももう金プラのことは言わないでくれよ。」
「わかったよ。もう話さないよ。」
大きな叫び声が聞こえた。
「うわ、金プラだ。金プラが一杯だ。」
となりの部屋のみんなは大満足。
「おいみんな、どうしてこんなことをするんだよ。約束しただろう。金プラこわい。金プラ恐い。」
大きな声をあげれば上げるほど、みんな大喜び。
「うわ、工芸品金プラだ。恐い、恐い。」
「うわ、小判金プラだ。恐い、恐い。」
「うわ、仏具金プラだ。うれる・・。こわい・・。」
様子のおかしいのに気がついて部屋の中を覗いてみました。
「うれしそうだぜ。片付け本舗に電話してるぜ。こりゃだまされた。ねえ、内ちゃん、一体何が恐いんだい?」
「大きい宝石が恐い。」
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